この章では、耐震予備診断の計算方法を記す。
1.調査、又は建築図による検討条件
a.延べ床面積 ΣAf :上階床面積総計
1階を検討する場合、2階~R階の全床面積
b.壁断面積 Aw:検討する階の壁断面積 総計(壁長×壁厚)
c.柱断面積 Ac:検討する階の柱断面積
Aw、Acの算出において、柱と壁が接続する場合、壁長は柱芯、壁端の長さとする。
2.壁率・柱率の計算
延べ床面積に対する壁断面、柱断面の比率を求め示す。
単位床面積あたりの柱面積、壁面積で、これらの数値が大きい建物は耐震性能が高い
と考えられている。
壁率 Aw/ΣAf
柱率 Ac/ΣAf
3.耐震指標 IS値の計算
3-1.概要
建物の耐震性能は、地震荷重と、それに抵抗する構造部材(柱・壁)の強度を比
較することによってなされます。
a.地震荷重は、建物の重量が水平方向に作用するものですので、単位床面積あたり
の重量が、その目安となります。
b.一方、建物の強度は、上述の壁率、柱率の単位面積あたりのせん断強度を乗ずる
ことによって得られる値が、単位床面積あたりの耐震強度となります。
耐震予備診断においては、aについて通常のRC構造において、想定される値、
1200kgf/m2を用いて地震荷重とします。bについては、壁せん断強度を18kgf/cm2、
柱強度を9kgf/cm2として、地震に抵抗する強度を求めます。
3-2.IS値計算式
建物重量 1200kgf/m2
X方向強度 Awx×18+Ac×9
X方向Is値 Isx=(Awx×18+Ac×9)/1200
Y方向強度 Awy×18+Ac×9
Y方向Is値 Isy=(Awy×18+Ac×9)/1200
3-3.IS値の判定
地震荷重、柱・壁強度ともに大ざっぱな計算ではあるが、これらによって得られた
値が、0.8を上回る場合、耐震的に安全であると判断します。
Isx > 0.8
Isy > 0.8
ここで計算されたIs値が、0.8に満たない場合、十分な耐震強度を有してると判断することが
出来ないので、地震荷重、建物強度について、より詳細な検討が必要となります。
詳細解析のおいては、Is>0.6であることが目安となります。
ちなみに、新規に計画、建設される建物においては、二次設計において、耐震性能を
<Ds値>によって与え、建物の力学特性に対応して、Ds値の最小値が設定されます。
(0.3~0.55以上)
新規に計画設計される建物のDs値は耐震診断におけるIs値に相当するものです。